Interview

INTERVIEW 岡崎友子

女性プロ・ウィンドサーファーの先駆けとして活躍した岡崎友子さん。現在は、マウイ島をベースに、カイトボーディング、スタンドアップパドル、サーフィンなどさまざまなマリンスポーツに取り組んでる。世界各地をトリップし、イベントを主催したり、ボランティア活動にも積極的に参加するなど、幅広い見識があることでも知られている。

unnamed

岡崎友子/ 写真 横山泰介
神奈川県・鎌倉市出身。16歳でウィンドサーフィンを始め、1991年、ウェーブライディングで世界ランク2位に輝く。大学卒業後、マウイ島に移住、カイトボーディング、サーフィン、スタンドアップパドル、女性のためのウィンド、カイト・スクールを主催。女性のプロ・ウィンドサーファーの先駆け的な存在として活躍。サーフィン雑誌などにも寄稿するなど、執筆活動や翻訳なども行っている。また、ジェリー・ロペスやレアード・ハミルトンなど、サーフィン界のレジェンド達との親交も深い。パタゴニア・サーフィンアンバサダーの一人でもある。

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ )

岡崎さんはハワイと日本を拠点に活動されていますが、どのように住み分けているのでしょうか?

岡崎 30年近く前にマウイに初めてきたのはウインドサーフィンがしたくて、上手くなりたくて、でした。それ以来住み分けると考えたことはありませんでしたが、必要な時間をマウイで過ごしていたらほとんど半年マウイ、それ以外は世界中のあちこちを旅するようなパターンができていました。震災前までは年に1ヶ月ほどしか日本に帰ってなかったのですが、なぜか震災後、気持ちが日本に戻ってきたというか、そして日本で自分がやれること、やりたいことも増えてきて自然と日本にいる時間が増えてきている状態です。今年はかなり日本に長く滞在しましたが、これからどうなるかは本当にわからないです、自分のやりたいことに合わせてる感じです。

SFJ ジャック・ジョンソンを始めハワイのサーファー達は、海の環境を守る環境活動に積極的に取り組んでいるように思えますが、いかがでしょうか?

岡崎 ジャック・ジョンソンが有名になり、その有名になったことと、稼いだお金を使ってコクア・ファウンデーション、そしてコクア・フェスティバルをやりだしたことは本当に素晴らしいことでした。若い世代にも自分の生まれ育った土地を大事にすること、次の世代に受け継ぐことの大切さを教え、またそれがかっこいいという気持ちを植え付けてくれたからです。最近の若者は私達の世代よりも食べ物に気を使ったり自然環境に関心を持つ人が多いのではないかと思います。ジャックの素晴らしいのは有名になってお金をあれだけ稼いでも、それをコクア・ファンデーションを通じて地元に還元したり、学校に行って子供達といろんなプロジェクトに取り組んだり、また本人はボロボロのクルマを未だに乗り続け、気軽にサーフィンに出かけ、贅沢をしない、そして出来る限りサステイナブルなライフスタイルを実践し、周りの見本となってくれていること。オーシャンフロントに豪華な家を建て綺麗な格好をして贅沢に生活できる人であり、できるようになるとついついそうなってしまう有名人も多いのに、全くブレていないところです。だから普通に暮らすジャックを周りのローカルも普通に受け入れ、できるだけ人の目を気にせずホームにいる感覚ですごせるよう騒がないであげてる気がします。マウイでも俳優のウッディ・ハレルソン、ミュージシャンのウイリー・ネルソンなどがジャックと同じように、ファームエイドなど農民を支援したりしてセレブっぽくない自然の中での生活を送っています。

SFJ 歴史的にみても、ハワイのサーファーは昔から環境問題に積極に取り組んでいますよね。

岡崎 はい、ジャックが初めてなわけではなく、例えば戦後オアフ島のアラモアナ辺りに堤防を入れたり人口の港を作ることで素晴らしい波がなくなってしまうことに対して、ジョン・ケリーなどのサーファー達がアクションを起こし、そこから環境保護活動にサーファーが取り組むようになっていったのではと思います。そのおかげで世界一速いチューブを巻くマウイ島のマアラエアハーバーが何度も救われてきているし、オアフでも幾つかの場所が残りました。

SFJ 最近では、ハワイのサーファー達の環境活動はどうでしょうか?

岡崎 海だけでなくハワイの環境全体、例えば山や土地、開発や農薬に至るまで、いろんな面で環境保護活動に積極的にサーファー達が関わっています。

SFJ  なぜハワイのサーファーは海の環境問題に対して熱心なのでしょうか?

岡崎 自分の好きなものが失われるかもしれないと思ったら誰だってそれを守ろうとするでしょう? ハワイのサーファーはここの波が世界有数の素晴らしい波であり、それがあるからこそ、その波に乗れる毎日を送っているからこそ自分達は幸せであり、何か悶々とすることがあっても一日の終わりに波乗ることであるいは浜を歩くだけでも心が浄化されることを知っています。その海が失わないように熱心になるのは当たり前のことだと思います。

SFJ  岡崎さんのホームグラウンドのマウイ島では、ローカル達はどのような環境保護活動を行っていますか?

岡崎 つい最近、もう今にも立てられそうになっていたオロワルというサーフポイントの堤防の建設をくい止めました。他にもサーフライダーファウンデーションも定期的にビーチクリーンのイベントを行ったり、他の団体もビーチクリーンをよくやっています。そういう時もただクリーンアップするだけでなく子供達が楽しんでできるアトラクションやコミュニケーションの場としてバーベキューや地元のサポートで食べ物が出されたりし、お楽しみをつけたりして人が集まりやすいようにしています。

SFJ  今、ハワイのサーファー達が最も危惧している環境問題は何でしょうか? またそれに対してどのような活動をしていますか?

岡崎 いろいろありますが、開発業者などのむやみな環境破壊じゃないでしょうか?ハワイ島マヌアケアの頂上に建てられる巨大な建物に対する問題、イアオ渓谷の水を違法にとっている企業や、バイオ化学メーカの動きなどそれぞれを危惧している人達がモニタリングしてくれています。そして志のある人達、自分達はハワイの独立運動を進めたいからアメリカの政治を認めないとして、今まで政治にかかわろうとしていなかったハワイアン達も自分の土地を守るために政治にかかわり始めています。

SFJ  ハワイのサーファー達が行っている環境保護活動で、これは日本でも取り入れたらいいということはありますか?

岡崎 ボルコムがやってるパイプの大会のようにすべての面でサステイナブルを目指したイベントが増えると、ああそうかとその場で観戦している人も自分の行動を今一度振り返る気がします。後はできる限りゴミを作らないことへ意識に変えていくのが次の課題だと思います。学校で無農薬農園を子供達に作らせてそこでできたものを給食に使う、給食が無理でも自分達が作って見て育つのを見て、それを食べることの楽しさや達成感は子供達にはたまらないと思うし、インパクトがあると思います。そして健康にもいい! マウイではスーパーなどでプラスチックバッグが一切禁止になりました。それだけで随分プラスチックバッグのゴミが減ったと思います、そしてなくなっても不便じゃない。カリフォルニアでは、ペットボトルを売らないという決定をした市もあるらしいですが、今まで当たり前にあったものをなくすのは無理と考えがちですが、実際なくなってみると人間って適応能力がすごいからそんなに困らないんです。

SFJ  岡崎さんはジェリー・ロペスやレアード・ハミルトンなどの有名なサーファーとも懇意にされていますが、彼らの海環境に対する思いや行動で感銘を受けたことはありますか?

岡崎 環境を大切にしたりすることは、彼らにとってあまりに当たり前のことすぎてわざわざそのことについていろいろ話してくれることもありませんでした。しかし、彼らがふとした時に話してくれる多くの言葉や教えは、今でも何かと頭に浮かんできます。彼らは環境問題にかかわる講演などにも自主的に参加することは当たり前です。何よりも、海と真面目に取り組むことは人を瞬時に、そしていつでも謙虚にさせてくれる、それを彼らはよく理解していて、実践しています。あんなすごいことをしている人達ですが、実際会ってみるととても謙虚で地道な努力を惜しまない人達です。

SFJ 岡崎さん自身が、海の環境のために取り組んでいることはありますか?

岡崎  大したことはしてないです。当たり前のこと以上のことはできてない。一つ努力しているといえるのは、海が生活の一部になっていない人や子供達にもっと海を近づけたい、ということです。私にとって海はなくてはならないもの。本当に大事なものだから大切にしたいし、守っていきたい。その気持ちがあるから環境問題にも真剣になる。ほとんどの環境活動家がもともと外で遊んでいた、あるいは自然が生活の一部だった人ばかり、現場にいるから一番危機感を持つのも当然です。理論的に自然を大切にと言われてもピンとこないけど、自分の体と魂でそのありがたみを子供の頃から実感していればどんなことがあっても大切にしようと思ってくれると思う。そんな子供達が大人になり、政治にかかわっていくことが結局は自然を大事にしていく国を作る近道なのではと、思うようになりました。そして吸収力の強いスポンジみたいな子供達にとっては自然の中で楽しかった経験は物凄いインパクトを与えます。大人になってからもそれが影響を与えるのを目の当たりに見てきてるので(自分もそうだし)子供達が外でできるだけ遊ぶ、ちょっと危なっかしいことでも大人がしっかり周りで見ながらチャレンジさせてあげられるような環境作りのお手伝いができたらと思います。

SFJ 今後、サーファーそしてサーフライダーファウンデーションは、海のためにどのような活動をしていったらいいと思いますか?

岡崎 できることはたくさんありますが、まずはメンバーを増やし、多くの仲間が同じ思いで熱意を持って動くことで大きな力が生まれ、いろんなことが変わっていくと思います。それには、たくさんの人が一緒にやりたいと思えるような活動、楽しそうな雰囲気、そしてかかわってることに誇りを持てるような組織の結束が大事だと思います。好きなことには忙しくても時間を作る。サーファーはまさにサーフィンするために夜中に起きてでも海に行きますよね。だったら楽しくサーフィンするために、それも今だけでなくこれから何十年、何百年続けられるために守っていかなくてはならないことがたくさんあることを知ってもらい、人ごとではなく自分の行動にかかっていることを知ってもらうのがいいと思います。そして子供達にももっと海で遊んで、海が彼らにとって掛け替えのないものだという気持ちを持ってもらえるような活動を増やしていってほしいです。

SFJ 最後に日本のサーファーに対してメッセージをお願いします!

岡崎 私もこれだけ海にたくさんのものを与えられ、教えてもらってきながら、まだまだ海や自然環境のためにできることをしてません。いつも反省してばかり。でもまずはどんなことが起こっているか知ること、知れば、それはまずいでしょう!と危機感が生まれます。あまりにたくさんの問題がありすぎて、自分一人の力なんて何もならないだろうと思いがちです。じゃあ、これだけでも、と自分が一番優先したい問題に関してだけでも自分ができることをするとか常に情報を集めて何をすべきか考えるとかするだけでも違うと思います。海に行くたびにゴミを拾うだけでも、まずは自分の気持ちが変わります。「ありがとう」と海に感謝する気持ちでゴミ拾いできて、スッキリします。でも同時にゴミを出さないことにも意識を持っていかなくては、と私も常に反省しています。たくさんの人が集まれば集まるほどいいアイデア、ワクワクするような環境を守っていく方法が出てくると思います。私も、そんな楽しいメンバーの仲間に入れてもらえればうれしいです。

カイトjpg
Photo: Jimmie Hepp
マウイ島ホキパにて。大きな波が来る冬はできるだけマウイ島を離れずに予定を組まず、風と波に合わせる生活パターンを目指している。

サップキャンプ
Photo: Hiroshi Ito
このキャンプで協力しあって何かをする、そして一生懸命やった後の達成感を経験してほしい。でも純粋なキッズ達に私達が与えてもらっているものもたくさんある。

unnamed-1
Photo: Tomoko Okazaki
どんなに体が小さくても恐怖心を克服し、真剣に何かをやろうとしている姿は感動させるものがある。この子もこのキャンプ以来サップが大好きになったらしい。

サップキャンプ3
Photo: Hiroshi Ito
キッズキャンプ中、夕食を作る前にまず食材を畑から採るところから経験してもらう、収穫して自分で作った食事は最高に美味しい。

バハ
Photo: Clark Merritt
毎年訪れるバハのサーフキャンプ。砂漠にポツンとあるサーフキャンプで、寝る、乗る、食べる、だけの毎日。インターネットもほとんど使わず、本当にシンプルな生活が実はとてつもなく贅沢。

ダスティンPhoto: Tomoko Okazaki
元ワールドツアーを回っていたプロサーファーのダスティン・バーカは、環境問題を訴えてカウアイ島の市長にまで立候補。サーファー達がハワイの環境問題に注目するようになったのは彼の存在が大きい。

取材・構成 : 佐野 崇

執筆者  
  • LINEで送る

logo_kikinn
当サイト掲載インタービューは独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて制作しています。