Interview

INTERVIEW 栗田直美

湘南・藤沢市にあるFujisawa SST(Fujisawaサスティナブル・スマートタウン)。名前の通り持続可能なエネルギー環境に根ざしたエコタウンとして、日本のみならず世界からも注目を集めている。そのプロジェクトのアンバサダーを務めているのが、プロサーファーの栗田直美さんだ。日々、海と身近に接しているサーファーの立場から、街づくりの一角を担っている。

unnamed

栗田直美/ 写真 横山泰介
埼玉県出身。小学生のころ、雑誌でサーフィンの世界を目にして海への憧れを抱く。高校卒業後、友人に連れられて、初めて波乗りを経験。藤沢に移住してから、本格的にサーフィンに取り組み、JPSA公認プロサーファーの資格を取得。現在は、Fujisawa SST(Fujisawaサスティナブル・スマートタウン)のアンバサダーを務めながら、プロ活動を両立する多忙な日々を送っている。 ■Fujisawa サスティナブル・スマートタウン 公式ホームページ ■FujisawaSSTマネジメント株式会社 Facebookページ

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) 

まずはFujisawa SSTとは、どのような街(プロジェクト)なのか教えていただけますか?

栗田 正式名称は「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」と言います。先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の街づくりプロジェクトで、パナソニックの藤沢工場の跡地を再開発をして2014年4月に街びらきをしました。戸建住宅600戸、集合住宅400戸、コミュニティ施設、商業施設、健康福祉教育施設、次世代物流施設からなる複合型スマートタウンプロジェクトです。コンセプトは「生きるエネルギーがうまれる街」です。それを実現するために街全体の数値目標を設定しています。環境面ではCO2を70%削減、生活用水の30%削減、再生可能エネルギー利用率30%以上を掲げています。

SFJ 具体的には、どのような方法で数値を達成しているのですか?

栗田 例えば、CO2を削減を実現するために、省エネ家電の推奨や、電気自動車、電動アシスト自転車のシェアリングサービスの提供、街中の外灯は夜間誰もいない時は照度を落とし、人やクルマが通ると照度を上げるエコな外灯を設置しています。タウンデザインは、湘南の光と風を取り込む街区設計をすることで、風通しがよく、冬は南側からの明りを長時間取込むことができ、冷暖房の使用を減らすことができます。各住戸には、「スマートHEMS」と呼ばれる住まいのエネルギーを視覚化するシステムで設備や空調環境機器をコントロールして、節電意識を高めております。この街では、すべての住宅をはじめ集会所や商業施設など、街中に太陽光発電システムや蓄電池を設置しています。県道沿いのコミュニティソーラーは非常時には、FujisawaSSTの住人だけでなく、周辺地域住民にも開放します。太陽光を最大限に活用し、自分達で使うエネルギーは、できる限り自分達で作る「自立共生型のエネルギーマネジメント」をすすめています。

SFJ 栗田さんは、Fujisawa SSTアンバサダーという肩書きですが、どのようなことをしているのですか?

栗田 この街には、住人、企業、周辺地域や街で働く人まで参加できる「まち親プロジェクト」があります。街にかかわるみんなが街を育てる「まち親」としてアイデアを自由に出し、街を成長させていくものです。私も「まち親」の一人です。アンバサダーとして、FujisawaSSTの街のPRをし、プロサーファーという立場から住人向けに海やサーフィンをテーマにしたイベントを開催することで、コミュニティ醸成につながる取組みをしています。また、この街はさまざまな企業と実証実験をしており、BtoB(企業対企業)向けの見学ツアーを開催しています。アンバサダーとしてツアーのアテンドも担当しています。

SFJ Fujisawa SSTは、世界でも屈指の最先端のエコタウンとして、国内外からも注目を集めています。栗田さんの役割は重要ですね。ところで、住人を対象としてサーフイベント「FSST SURF MEET」を開催しているそうですが、どのような目的で始めたのですか?

栗田 一つは、コミュニティ醸成の活性化です。この街に住む住人同士のコミュニティはもちろん、サーフィンを通して、近隣地域住民との交流も図りたいと考えています。最近では、サーフィンをテーマにした座談会を開催しました。「第1回顔合わせ」的なイベントです。今後は交流会の他、サーフレッスン、ビーチクリーンなど、定期的な活動を行い、サーフィンを通して、海や自然、環境問題などにも取り組み、住人さんと一緒にアイデアを出し合い、FujisawaSSTならではのサーフコミュニティを作っていきたいと思います。

SFJ 栗田さんはプロサーファーとしても活躍していますが、なぜアンバサダーに就任したのですか?
栗田 最初はこの街の新たなサービスの導入に伴い、短期の派遣社員として勤務していました。藤沢を拠点に、プロサーファーとして活動している旨を話したところ、活動にご賛同いただき、アンバサダーに就任することになりました。JPSA(日本プロサーフィン連盟)の年間ツアーに参戦するために不定期のお休みも、快く受け入れていただいています。普段はシステムサービス部に所属し、この街のシステム運営や維持管理、設備保守などをしています。

SFJ アンバサダーになってから、海やサーフィンに対する思いや取り組みに変化は変わりましたか?

栗田 はい、変わりました。ローカーボンな街づくりに携わるにあたり、産業や暮らしが地球温暖化に与える影響を考える機会が増えました。サーファーとして身近に感じるのは、地球温暖化による海面上昇、海岸侵食問題です。それから、海洋がCO2を吸収し、PH値低下による「海洋の酸性化」が進行している問題ですね。今、私達がこうしてサーフィンができる環境に改めて感謝をするとともに、次の世代も変わらずサーフィンができる環境を残すこと、その思いが強くなりました。

SFJ 街から海の環境問題を発信できるというのは、アンバサダーの栗田さんならではですね。今後、アンバサダーとして、どのような活動をしていきたいですか?

栗田 FSST SURF MEETの定期的な活動の他、街のBtoB向け見学ツアーでは、様々な国内外の企業の方々とお会いする機会がありますので、一般企業にもサーフィンというスポーツをより深く知ってもらえるよう活動をしていきたいです。また、この街には未来を担うたくさんの子供達がいます。Fujisawa SSTそして藤沢で育つ子供達に、海やサーフィンの楽しさ、自然の尊さを伝え、次世代へとバトンをつなげたいです。

SFJ 今後の活動がとても楽しみです。ちなみに、栗田さんにとってサーフィンとは?

栗田 卒業のない学校だと思っています。海でたくさんのことを学ぶからです。サーフィンの技術だけでなく、波や地形、海のこと、天気図の見方、ローカリズム、環境問題、海外トリップに行けば、その国の言葉や歴史、宗教など学ぶことができますし、コミュニケーションスキルも身につきます。サーフィンと出会わなければ、多くのことに気づかなかったと思います。

SFJ サーフライダーファウンデーションに求めることはありますか?

栗田 私は環境問題の専門家ではありませんし、知識も少ないです。今、海で起きている問題や、今後起きるであろう問題と、それに伴う活動をしている人達のことをたくさん取り上げていただき、多くの人達に「知るきっかけ」を作ってほしいですね。

SFJ 最後に全国のサーファーへのメッセージをお願いします。

栗田 「100年先も今と変わらず、仲間といい波だったね!」と笑って言える環境でいられるよう、今できることはなにか、社会と海と暮らしの新しい姿の実現を目指して、皆さんと一緒に考えていきたいです。

unnamed-2

栗田さんの背後に広がるのがエコタウン、Fujisawa SST(Fujisawaサスティナブル・スマートタウン)。その先進的な取り組みに国内外の企業やメディアが注目をしている。栗田さんはアンバサダーとして街のPRやツアーのアテンドを務める重責を担っている。

unnamed-1

Fujisawa SSTのオフィスでは、街全体のエネルギーの発電量や消費量などが表示される。各住戸も「スマートHEMS」というシステムでネネルギーが視覚化でき、節電意識を高める一助になっていると言う。

04
Photo / M.Kitamura

Fujisawa SSTは栗田さんのプロサーファー活動を幅広くサポートしてくれている。サーファーとしての海で培った経験や知識を、街づくりに生かすことを求めらている。

05b

街の住人を対象として「FSST SURF MEET」を開催した。サーファーだけでなくサーフィンに興味がある未経験者も参加。「サーフィンを通して、近隣地域住民との交流が図れたら」

06b

今後の「FSST SURF MEET」の活動は、参加者が自由にアイデアを出し合って決めていく予定だ。「ビーチクリーンは定期的に行いたいと思っています。サーフィンをすることで、海や自然、環境問題などに自然に取向き合うのでは」と、栗田さんは期待をする。

image1

埼玉県出身でマリンスポーツには縁のなかった栗田さんだが、今ではサーフィンは人生に欠かせない存在。「サーフィンは卒業のない学校。出会わなければ、多くのことに気づかなかったと思います」

取材・構成 : 佐野 崇

執筆者  
  • LINEで送る

logo_kikinn
当サイト掲載インタービューは独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて制作しています。