INTERVIEW-Vol.21 西世古篤哉

世界中で大きな影響を与えている新型コロナウイルス。現在、人々は新しい生活様式への変容を強いられている。4月に7都道府県に緊急事態宣言が発令され、行政機関から不要不急の移動も求められた中、海へ行くことを自粛したサーファーも多かった。「このような状況下で、自分達ができることは何だろう?」。そんな思いを胸に、三重県志摩の若きサーファー達がある行動を起こした。それは海へ入ることを我慢して、砂浜のゴミを拾うこと。そのサーファーの一人である西世古篤哉さんに話を聞いた。

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西世古篤哉 / 写真  横山泰介

2005年、志摩市生まれ。プロサーファーで国府の浜にサーフショップ「PLAYA SURF」を構える父・文彦さんの影響で、6歳からサーフィンを始める。2018年に開催された「WSL伊勢志摩プロジュニア」のグロムクラスで優勝を飾るなど、将来に期待がかかる若きコンペティター

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自宅は父親・文彦さんのサーフショップ「PLAYA SURF」の隣。中学校までは15分かけての自転車通学。自粛中は海に入ることもできず、朝夕、ランニングなどトレーニングに励んだ

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) :西世古さんは、中学3年生だそうですが、自粛中に地元の若いサーファーとともにビーチクリーンを始めたそうですね。

はい。4月半ばまでは「コロナが流行っているけれど、まあ海なら大丈夫やろう」みたいな感じで、みんなサーフィンをしていました。だけど、だんだんと「やっぱりダメなんじゃないか」となって。「じゃあ、海には入れないし、何をする?」と、地元のサーファーの先輩達が声を上げたんです。ちょうど、その時は波があって、浜もすごく汚くなっていたので、「じゃあ、次に入る時のために綺麗にしよう。ビーチクリーンをしようか」と始めた感じですね。あのような状況なので定期的に集まるのが難しかったので、それぞれが自発的にゴミを拾うようにしました。海に入る時に浜が汚かったらモチベーションも上がらないし、どれだけ波がよくても楽しくない。やっぱり綺麗じゃないと気持ちよくないですからね。

SFJ :3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けるために、人が集まるのは難しいですからね。

自粛中、僕は朝と夕方、浜をランニングする時にゴミを拾うようにしていました。それが毎日のルーティンでした。サーファーだけでなくて、地元の大人達も賛同してくれました。

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普段から海のゴミは拾っているが、緊急事態宣言発令中は海にはいっさい入らずに仲間とともにビーチクリーンに専念した。「またきれいな海でみんなとサーフィンをしたい」という思いとともに

SFJ :以前からビーチクリーンをしていたそうなので、地域の方々も協力的だったのでしょうね。

はい。自治会がビーチにゴミ箱を設置しているのですが、そこに海で拾ったゴミを入れさせてもらっています。

SFJ :先ほど、地元の方に話を聞いたら、サーファーのビーチクリーン活動は「とても。ありがたい」と感謝していました。サーファーが海でゴミを拾っているのを目にしたり、ゴミ箱に海ゴミが入っていると、海水浴客や観光客が自分達のゴミを捨てることを遠慮して、持ち帰って行くそうです。ちなみに、志摩は県外のサーファーも多く来ますが、自粛中はどうでしたか?

最初は、感染者が多く出ている地域からもサーファーが来ていて、地元の人達も「何でや」と言っていました。有料駐車場が閉まっていて路上駐車しているサーファーもいたので、お爺ちゃんお婆ちゃんも、クレームではないけど、「どうしてこんなにおるんや」とすごく心配していました。ですが、5月に入ってしばらくして、「さすがに今はやめとこうや」みたいな感じになったのか、段々と人も少なくなっていって、最終的にはずっと人がいない状態でした。

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自治会がビーチに設置しているゴミ箱。サーファーのビーチクリーンへの利用にも快く応じてくれている。海のゴミが入っていることで、海水浴客などが自分達のゴミを捨てることを遠慮して持ち帰るようになった

SFJ :地元の西世古さん達が海に入らないでゴミを拾うという行動が与えた影響も大きかったのでしょうね。緊急事態宣言が解除され、都道府県をまたぐ移動もできるようになり、サーフィンも自由にできるようになりましたが、いかがですか?

やっぱり楽しいですね。今は県外からサーファーもきて、いろんな人とみんなでできています。地元や県内、他県とかを超えて、海に入るのを我慢していた人達がみんな海に入れて、もうハッピーですね。

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親子で仲良く波をシェア!緊急事態宣言が解除されて、国府の浜も徐々に普段の姿を取り戻してきた

SFJ :志摩エリアはサーファーと地元住民や行政との結びつきや信頼関係がしっかりとしているように感じます。昨年は台風の影響でキャンセルになりましたが、世界大会の「WSL伊勢志摩プロジュニアKENJIMEMORIAL」を毎年開催して、地元をあげて盛り上げています。過去、西世古さんも優勝して、地元選手の実績があがっているのも大きいのでしょうね。市長への表敬訪問もして、注目度も上がっています。今後、地元のサーフカルチャーをどのようにしていきたいですか?

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SDGsをしっかりと理解している中学生の篤哉さん、きっと未来の街づくりに繋がっていくのだろう

今みたいな感じでいろんな所からサーファーが来て、「サーフシティ」ではないですけど、カリフォルニアみたいな感じですごくにぎやかになったらいいですね。同級生もそうですが、地元の若い人達もまだまだサーファーは少ないので、みんなでサーフィンを楽しめるような環境にしたいですね。

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SFJ :西世古さんは、昨年宮崎で開催された『2019 ISA World Surfing Games』でオフィシャルサポーターとして、メキシコ・チームの日本滞在もサポートしました。海外にも目を向けているようですが、将来の目標は?

CT(WSL チャンピオンシップツアー)に出て、世界チャンピオンになるのが夢ですね。

SFJ :どうもありがとうございました。

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ビッグウェーバーとしても知られる文彦さんとともに、幼少のころより毎年海外に遠征に出かけている篤哉さん。その目は既に世界に向いている

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