「森里海のつながりをレジリエンスで紐解く」シンポジウム開催

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2019年2月16日(土)、京都大学にて「足元から見直す、持続可能な暮らし 〜森里海のつながりをレジリエンスで紐解く〜」が開催され、スピーカーとして参加させていただいた。

今回のシンポジウムは、実践者や研究者の話から「足元にある持続可能な暮らし」に対して気付きを得て協働型対話に繋げ、「森里海関連学とレジリエンス」のこれからについて考える機会を持つことなどを目的としていた。

今回主催の京都大学森里海連関学教育研究ユニットの京都大学・特定准教授 清水美香氏によると、キーワードとなるレジリエンスとは以下の様な意味を持つ。

レジリエンスは、ラテン語で”resilire”「元に戻る」を語源とし、一般的には「逆境に遭っても、折れずにしなやかに(柳のように)回復する力、変化する力、発展する力」を指す。また専門的には広義に「人、森、都市といったシステムが変化に対応し、発展しつづける力(または器量)」と定義されている。ここでの力とは、物理的な「力」(power)ではなく、”capacity”という英語訳が当てられており、弱くても、内と外から育てるものといった「器(うつわ)」の意味合いがあるそうだ。

プログラムは以下の通りであった。

<プレセッション>
Ⅰ.オープニング&インスピレーション対話
Ⅱ.全体参加型ワークショップ・グループワーク・シェア+対話

<本セッション>
Ⅰ.森里海のつながりをレジリエンスで紐解く
基調対話 森とレジリエンスから、社会イノベーションへ
Ⅱ.現場を知る:「森里海をつなげる」を実践する現場
・高校生ポスター 1分紹介タイム
・高校生ポスターセッション
Ⅲ.向き合う:マイクロプラスチック問題・自然災害に向き合う
Ⅳ.繋げる:協働対話〜森里海連関学とレジリエンスのこれから〜

「知る」、「向き合う」、「繋げる」という過程で、木を見て森を見るように、全体と部分の両方を見渡すことで点を繋げ、持続可能な暮らしについて考える場となった。

プレセッションでは、「足元の実践×マイクロプラスチックから見える森里海の課題×レジリエンス」というテーマの元、京都大学・准教授 田中周平氏、エーゼロ株式会社執行役員 岡野豊氏、京都大学・特定准教授 清水美香氏による、各研究分野及び実践の場から現状の課題について話し合われた。

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田中先生はマイクロプラスチックを研究テーマとされており、今マイクロプラスチックは非常に微細でプランクトンの体内からも発見された研究結果などを発表してくださった。

また岡野氏は生態学を修了された後トヨタ自動車にて生物多様性戦略を立案され、現在は循環型の地域経済づくりに取り組まれていらっしゃるご自身のご経験などを話してくださった。

Ⅰ.森里海のつながりをレジリエンスで紐解く

基調対話 森とレジリエンスから、社会イノベーションへ

株式会社レスポンスアビリティ・代表取締役 足立直樹氏、慶應義塾大学・特別招聘准教授 井上英之氏、清水美香氏による対談では自然、人、社会の共通点であるレジリエンスのお話を軸に生物生態学やソーシャルイノベーションなど先生方の専門的な観点から、変化の時代にレジリエンスが社会イノベーションに繋がる知識を得ることができた時間となった。

Ⅱ.現場を知る:「森里海をつなげる」を実践する現場

岡野豊氏、東北学院大学・非常勤講師 千葉一氏、京都大学・特定准教授 清水夏樹氏による対談では「知る」に視点を移し、実践の場での活動についてお話を聞くことができた。

千葉先生はインドで地域文化研究や社会開発問題に携わられた後、3.11震災後には宮城県を中心に住民参加型の復興を提案・実施なさっていた。具体的には地元の木材を使って住民が施設作りに参加するという住民全体による運動が人々を繋げている実例を聞くことができた。

高校生ポスターセッション

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今回は8校の高校が招待高校として参加しており、関西圏のみならず北陸や中国地方からも参加があった。マイクロプラスチック問題をはじめとした環境問題に地域性や独自性を活かしたポスター発表された。彼らが今もこれからも非常に頼もしい存在であることは違いない。

Ⅲ.向き合う:マイクロプラスチック問題・自然災害に向き合う

このセッションでは九州大学・准教授 清野聡子氏、京都大学・特定研究員 法理樹里さんと共にSFJアンバサダーとして登壇させていただいた。

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SFJが向き合うマイクロプラスチック問題と、具体的な活動例として#ONEHANDBEACHCLEANUPキャンペーンについてお話しさせていただいた。また清野先生のご専門である海岸保全の視点から見た自然災害に関するお話を「向き合う」ことに着目してトークセッションを行った。

清野先生は実際に研究対象の現場で見てこられた全く自然的でない直線的な防潮堤、海が見えないという批判に対する策としてできた、防潮堤に開けられた不自然な窓(穴)など現状をご紹介くださった。

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海の中の問題、そして海から上がった浜での問題、尽きることのない問題を私たちは決して看過してはならず、精査するための知識がより必要だとお話を聞いて痛感した。

Ⅳ.繋げる:協働対話〜森里海連関学とレジリエンスのこれから〜

最後に集大成としてスピーカー全員による「繋げる」をテーマとした対話があった。

専門知識、実践現場からのお話から現在の環境問題と課題について知り、向き合う場を共有し、下のようなキーワードが生まれていた。

最初は共通点が見えにくかった考えがキーワードと共に浮かび上がり、「持続可能な暮らし」に対する、スピーカー、そして参加者個々のアプローチが見えてきたように思う。

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私は海に生きる者として、やはり現場に足を運び、五感を使って自然の声を聞くこと、感じることから生まれる新たな知や考え、関心を大切にして欲しいというメッセージをお話しさせていただいた。

人間、自分に直接関係がないと思い過ごしてしまうことがきっとほとんどで、それを自分ごととしていくためには、自然が自分の生活や存在に大きく影響すること、愛さざるを得ない大切でかけがえのない存在であることに再度考えを巡らすことが今すぐに求められているように思う。

非日常が日常に、他人ごとが自分ごとになれば、明日から見えるものは変わってくると信じたい。

このシンポジウムは私にとっても新しい知を獲得することができた、非常に有意義な機会でした。

関係者の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

執筆者