海から学んだサーフィンの魅力と私の生き方

「感性を磨きなさい」

これは私が高校3年生のとき、担任の先生が卒業する私たちに贈ってくださった言葉である。当時は正直、その言葉の意味がわからなかった。大人になった今、私は自然から感性の意味を教わっているような気がしている。

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2019年1月16日、東京都の麹町学園で講演を行う機会をいただいた。

「海から学んだサーフィンの魅力と私の生き方」というタイトルで、私自身がサーフィンから学んだ自然のこと、海から見た環境問題、そしてサーフィンに影響された私の生き方について、高校1年生の皆さんの前でお話しさせていただいた。

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両親の影響で8歳の時にサーフィンを始め、ジュニア日本代表を経て、高校3年生から今に至るまで日本プロサーフィン連盟公認プロサーファーとして活動している私だが、自身の経歴を振り返るとひとつの共通点がある。

それは「好き」に生きてきた、ということだ。

サーフィン、英語、教育と、私は今まで自分の興味関心のある方面に向かって生きてきている。全体に聞いたところ、サーフィンを経験したことがある生徒さんは約1〜2名、見たことがある生徒さんは約2〜3割程度であった。サーフィンの映像を見てもらい、サーフィンが自然と密に接するスポーツであることを知ってもらった後、サーファー特有の気付きについての話をする。

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この写真はある海外のビーチの写真である。

向かって左側には波に押し寄せられた形跡のある無数のプラスチックごみをはじめ、様々なごみが散在している様子がわかる。「ペットボトル」、「青い網」など、写真にあるごみを生徒の皆さんからも答えてもらった。今懸念されているマイクロプラスチックについては、予め授業で学習する機会があったそうで、生徒の皆さんの関心の集まるテーマとなった。

毎年約500〜1000万トンの廃プラスチックが海に流れているという推測もあり、そのうち約80%が陸上由来とも言われている。このままでは海では魚の数よりもプラスチックごみの方が多くなってしまうという説もある。

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私が海での環境問題に関心を持ったきっかけは、試合でのある出来事であった。

大事な試合でそのとき私は暫定3位だった。2位以上が次の試合へ駒を進めるという条件で、私は焦っていた。そのとき目の前に最後の良い波が来た。これに乗るしかないと思った。乗るべく漕ぎ始め、乗ろうと思ったその瞬間、進行方向の先には大きな青いビニール袋があった。青い、青い、自然でない、青。それを回避して私はその波に乗ることができず、負けた。

これが環境問題に関心を持つきっかけと聞いて呆れる方もいらっしゃるかもしれない。しかし当時の私にとってこの経験は本当にショックで、その怒りは行方を彷徨った。怒りの矛先の向かう先、それは青いビニール袋ではなく、それが海を漂うことを強いられた背景、つまり私たちの生活習慣と意識、そして既存の社会の仕組みであった。これを改善すべくして、私たちのフィールドを守れることはないと思った。

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この経験を通して生徒の皆さんに伝えたかったこと、それは自分の大切な場所を守るモチベーションは、まず問題を「自分ごと」として捉えることを意識することであった。

講演後の質疑応答では東京でゴミの多い場所を質問させてもらった。

「ハロウィンのときの渋谷」
「人が集まる観光地」
「本通りの一本裏の路地」

彼女たちがその光景を記憶していたのは、彼女たちの中でなにか感情が生まれたことが影響しているような気がした。

「感性」とはなんだろう。

辞書には「印象を受け入れる能力。感受性。また、感覚に伴う感情・衝動や欲望。」とある。問題を自分ごととして受け入れる過程に、感性に訴える出来事があったとき、その問題意識の存在は個の中で大きくなるのだと私は思う。「感性を磨く」こと。それは特に高校生という若い時分のエッセンスであるように、大人になった今、思う。

生徒の皆さんが、日々の生活に見え隠れする個々にとっての「青いビニール袋」の問題に取り組むこれからに期待すると同時に、私もフィールドから見える現実を少しでも改善できるよう、彼女たちと共に努めていきたいと思う。

最後になりましたが今回貴重な機会をご準備くださった麹町学園の先生方及び関係者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

SFJアンバサダー 武知実波

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本講演は独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて行いました。

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