インタビュー

INTERVIEW-Vol.15 西田亮介

社会学者として、多くの著述を手がける他、テレビや雑誌、新聞などメディアで幅広く活躍している西田亮介さん。専門分野である「情報社会」と「公共政策」の観点から、現在の日本の社会や政治が抱える問題を鋭い切り口で批評をする若手の論客として注目を集めている。根っからのサーファーでもある西田さんに、海の環境問題について話を聞いた。

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西田亮介/ 写真  横山泰介
1983年京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。2014年に慶應義塾大学にて、博士(政策・メディア)取得。同大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、(独)中小機構経営支援情報センターリサーチャー、東洋大学、学習院大学、デジタルハリウッド大学大学院非常勤講師、立命館大大学院特別招聘准教授等を経て、2015年9月より東京工業大学大学マネジメントセンター准教授。2016年4月より東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授(現職)。大学時代は茅ヶ崎で日本を代表するプロサーファーの家庭教師をしていた経験もある

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) :サーフィンを始めたきっかけを教えていただけますか?

京都出身なのですが、大学入学のために湘南台に移り住みました。で、入学して早々に大学の先輩に誘われて海に連れて行ってもらいました。5月初旬なのに先輩が持っていたシーガルで海に入らされて、凍死するかと思いましたね(笑)。それが最初のサーフィン体験です。 僕は中学受験をして、ごりごりに締める中途半端な進学校に進学したので、周りには地元の名士とか医者の息子とか似たような環境で育った学生ばかりでした。それがサーフィンをするようになって、若いうちから家庭や仕事を持っていたり、ショップスタッフやプロサーファーだったりと様々な人と付き合うようになり、「いろいろな人生があるんだな」ということを実感を持って教わりました。本当に貴重な経験でした。波がいいからと、仕事放っぽり出して海に行ってしまうような生活が破綻してしまっているような人もいて(笑)。

SFJ:大学の授業はもちろん、執筆やテレビ番組への出演など多忙なのに、週2日は海に行くそうですが、サーフィンの魅力とは?

やはり「スポーツではない」というところじゃないでしょうか。仕事柄、話すことがとても多いんですよ。そういう日常生活や仕事をシャットアウトしてリフレッシュができる。家族がいるので、すごく朝早い時間に、その割には結構遠いところまで運転して海へ行き、パッとリフレッシュして帰ってくる。その後に仕事をしたり、家族サービスをしたり……。そういう個人主義的な世界観が大好きです。今の日本社会ではほかになかなかないことでは?

SFJ:聞くところによると、大学生の時にサーフィンが理由で留年をしてしまったとか。

はい。分子生物学の試験の日に千葉に住んでいたサーフィンの先輩から、「今日波いいからちょっとこいよ」と連絡があって。「え、今からですか? 今日テストなんですけど…」。だけど、「まあ、いいかな」と海に行ってしまい…。結局1単位を落として。それを回復できないままに留年してしまいました。当然、就職というわけにもいかず、大学院に進もうと思ったら一回目は入試に不合格で、再挑戦して研究者の道を歩みました。留年していなかったら就職をしていたでしょうから、サーフィンのおかげで今の自分があると言ってもいいですね(笑)。

SFJ:長年海に通われていて、海の環境問題について何か肌で感じるところはありますか?

10年前と比べても、よくも悪くもある種の調和が意識されているように感じます。環境意識もそうだし海岸整備についての考え方が変わってきたと思いますね。例えば、適切に整備して観光などの地域資源としても活用しよう、と。そのためには過剰に手を入れるのではなくて、サーフィンの外の世界ともうまく調和しながらやっていく必要があると。海の自然に全く手を付けないというわけではなくて、一定程度整備してやっていく、という考えは大分普及してきた気がします。

SFJ:海の環境問題の改善のためにサーファーは、どのような活動をしたらいいとお考えですか?

サーファーとサーフィンをやらない人達、両方にとってメリットがあることを提言する必要があります。サーファーの利益のためだけではなく、例えばサーフポイントにシャワーやゴミ箱、ベンチとテーブルなどの設備が整った駐車場を整備すればサーフィンが観光として認められて、地域振興にもつなががるかもしれない。もっとバリエーションはありえて、託児所やコワーキングスペース、BBQスペースや簡易宿泊施設なども可能性がある。そうすれば、雇用も生まれ税収増にもつながります。東京五輪の会場になる一宮は好例ですが、地域の知名度も上がるかもしれない。サーフィンをしたついでに、他のアクティビティをしたり飲食をしたりとかで、サーフィンが地域産業、地域社会全体に貢献できることを上手く提示し、広く説明していくことが重要だと思いますね。行政というのは基本的にツールなので、その目的に応じて適切な働き掛けをすれば、適切な反応が返ってくるはずです。

SFJ:なるほど。行政をツールとして使うという考え方は新鮮ですね。

最初から行政批判みたいな体で行くと、向こうは向こうで身構えるに決まっています。ですから、行政にせよ政治にせよ、上手く使っていくということじゃないでしょうか。政治や行政の使い方については、必要があればぼくらに問い合わせてください。

SFJ:政治というと、選挙が重要になりますね。

そうですね。行政に何かを提言する時にも、一人でも地元の地方議員に付いてきてもらうと、話の通り方が違ったりするわけですね。地方議員、国会議員ともにですけど、それぞれ得意分野があります。例えば海沿いですと漁業関係に強い地方議員の人が必ずいるはずなんですね。そういう議員と上手く関係を築き、上手く他の業界や地域社会とコミュニケーションや交渉ができるかどうかが問われています。さらに一歩進んで言うならば、サーファーからその地域の代表を選出できるかが大事じゃないかと思います。実際そういう例も一部の自治体では生まれてきているようです。

SFJ:この夏には参議院選挙もあります。自分達の一票を大事に使いたいですね。今日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました。

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ライフワークとしてサーフィンのカルチャーも研究している。サーフィン専門誌に寄稿することも。研究室の蔵書の棚には、サーフィン雑誌が収蔵されている一角も

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社会学者としての視点から、日本の社会や政治について鋭く切り込む著書を多く手がけてきた。現在は児童向けにわかりやすく社会の仕組みを解説する本を執筆中だ

執筆者