インタビュー

INTERVIEW-Vol.16 福永洋一 / 岡本 詠

4年ほど前、日本でも屈指の美しい砂浜と知られる大岐の浜で、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の設置計画が持ち上がった。結果、地元のサーファーを始め地元住民の地道な反対運動で計画は中止になった。その活動の中心となった二人のサーファー福永洋一さんと岡本 詠さんに話を聞いた。

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福永洋一/ 写真  横山泰介
1974年高知県生まれ。大岐の浜を眼下に臨む民宿「大岐マリン」https://www.ohkimarine.com を家族で営む。隣町の四万十市(旧中村市)出身

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岡本 詠/ 写真  横山泰介
1973年高知県生まれ。土佐清水市議会議員。2014年、無所属新人ながらトップで当選を果たす。現在も議会の役割を果たすべく、市民の声として是々非々のスタイルを貫いている。

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) :福永さんはメガソーラー(大規模太陽光発電所)建設反対運動の中心的な役割の一人として活動されましたが、計画を知ったきっかけは?

福永 2015年の5月くらいに、メガソーラーの計画が持ち上がっていることが地元でウワサになったんです。そこで有志でグループを作り、サーフィン仲間である市議会議員の岡本君に相談して情報を集めました。そして、だんだんと計画内容が明らかになりました。これが実行されたらとんでもないことになるぞ、と驚きましたね。25ヘクタール、実に東京ドーム5個分の森林を伐採して造成をする大規模な計画です。山を切れば雨が降ると汚泥が海に流れます。磯にかかり、海藻が死んで、魚も少なくなるかもしれない。当然、海の環境も変わってしまいます。山と川と海というのはつながっていますからね。そこで住人に対してメガソーラーについての勉強会を開いたんですよ。そうしたら、急に地権者の会社が説明会を開くことに。ですが、納得できるような説明を得られなかったんです。

岡本 まず市役所に問い合わせると、確かに計画の報告は受けているとのことでした。そこで当事者の地権者に話を聞きに行くと、実際にメガソーラーの計画を進めているということでした。景観は損なわないか、除草剤を使うのか、自然破壊につながらないのか、海や生物への被害は出ないのか?何よりも地元住民への影響は?等々伺ったのですが、明確な答えは返ってきませんでした。何も知らされないまま既に計画が進んでいるのかと考え大きな危機感を抱きました。

SFJ:と、言いますと?

岡本 実は先例があったんです。少し前に市街地の緑ヶ丘地区にメガソーラーが建設されていました。住民は反対していたのですが、隣接した山を大きく削ったため、雨が降ると目の前に広がる土佐清水の表玄関でもある清水港に、大量の汚泥が流れ出してしまったのです。漁業者や地元住民の生活環境への影響も懸念されました。今回の大岐のメガソーラー計画ではその何倍もの大きな面積を削る計画でしたので。

SFJ:なるほど。具体的にどのような反対活動を行ったのですか?

福永 当時はまだ、自然エネルギーの開発に対しての法整備も整ってなく、全国でメガソーラーのトラブルが出始めていました。調べていくと、大規模太陽光発電施設を建設するにあたって、経済産業省への申請、県、市の条例、要綱等が関係することがわかり。高知県の「高知県土地基本条例」という条例があって、今回の大岐メガソーラー開発に対しては高知県の許認可。さらに条例を読み込んでいくと、開発関係住民への意見聴衆、となっている。そこしか突破口はないと思いました。つまり、地元住民の総意で反対を表明する。

岡本 土佐清水市議会の場で「こういう問題が起こりつつある」ということを、市民の一つの声として市政に投げかけました。そこから徐々に計画の内容が拡散していき、住民運動や署名活動につながっていきました。

福永 サーファーの力も大きかったですね。ローカルサーファーはもちろんのこと、大岐に通うサーファーが地元へ帰って、署名活動を行ってくれて、それがどんどん広がっていって。全国各地から署名が集まりましたね。外国人からも署名が届きました。その中にはトム・カレンの名前もありましたよ。

SFJ:あれは湘南オープンの時に来日していたトムが、サーフライダーファウンデーションのブースで署名をしてくれたんですよ!

福永 反対運動の切り札となったのは、大岐自治会の総会でした。住民が臨時総会を開いて、9割以上が反対しました。要は推進派は、関係者のみ賛成という形です。そこで自治会として反対を表明することになりました。そして、隣接する自治会、漁業関係者でも反対決議をとることができました。

岡本 結果、建設を計画していた企業が、「地元の理解が得られない」として、計画中止を決定しました。皆さんの意見を受け止めてくれた企業の英断には本当に感謝しています。

SFJ:今回の運動で、何か得られたことはありますか?

福永 誤解しないでいただきたいのですが、僕達はメガソーラー自体、自然再生エネルギーを否定しているのではありません。自然を壊してまで、やる必要はないんじゃないか、ということです。僕達の世代で、大岐の海を自分の子供、その子供の世代に伝えられなくなったら、一番悔しくて残念に思うでしょう。それはサーファーだけではなく、みんな同じだと思います。お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、自分が子どもの時にはハマグリや魚を獲ったりした砂浜を残したいと思っていたんです。それが大きなうねりになって、市民に伝わり行政も一緒に動いた。「「反対!」「反対!」と言うだけでは何も生み出しません。推進している人達にも個人の正義があるので、そこを理解して、全体として調和が取れるラインを探していくのが大切だと学びました。

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SFJ:対立より、対話ですね。

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岡本 僕は小学生のころ大岐でサーフィンを始め、命に係わる海の怖さや自然の尊さを学んできました。大岐の浜は、緑色濃い山や青い空、透き通った海水など手付かずの豊かな自然に恵まれた日本でも屈指の美しいビーチです。この自然豊かな大岐の浜を未来の子供達に引き継いで自然の尊さを伝えていきたい。

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日本でも屈指の美しい自然を誇る土佐清水市・大岐の浜。白い砂浜と自然林が1.6kmも続く美しい海岸だ。遠浅のビーチから生まれるハイクオリティな波を求めて、県外からも多くのサーファーが訪れる。絶滅危惧種のアカウミガメが産卵する砂浜でもある。

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地元住民への同意がなく計画されたメガソーラー(大規模太陽光発電所)の完成予想図。東京ドーム5個分もの森林を伐採する計画だった。サーファーを始め全国各地の有志による建設反対の署名が一助になり計画は中止になった。

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同市内の緑ヶ丘地区にメガソーラーが建設された影響で、大量の汚泥が流れ出てしまった清水港。大岐の浜の海もこのような事態になっていたかもしれない。(岡本 詠さん撮影)

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