アフターコロナ、ローカリズム2.0

新型コロナウイルス感染拡大によって私たちサーファーにとっての日常も大きく変わることになった。不要不急の外出自粛が叫ばれる中で、自粛しない人達の絵としてサーファーが注目されたこの 2か月。そしてようやく緊急事態宣言が解除されることになったが、いわゆる “新たな生活様式”の中でサーファーがどの様に行動していくべきか、鵠沼生粋のローカル3人が語った。

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SFJ 江の島の渋滞、自粛しないサーファーが報道でクローズアップされて、サーファーに対する視線は厳しくなりました。

河村 自粛って人それぞれ捉え方に違いがあって、海に入らない人は自粛しているサーファー、海に入る人は自粛していないサーファーみたいな感じになってしまいましたね。

全員 自粛しない市民の代表、パチンコに並ぶ人、夜の歓楽街、サーファーみたいに(苦笑)

佐賀 確かに日本全国でみれば高齢化率の違い、病院の数が圧倒的に少ない地域もあって、地方では集中治療室が僅かしかなくて。もしサーフィン中に事故でも起きれば、病院のベッドをサーファーが埋めてしまうことになりかねないですから。湘南とは全く事情が違うんですよ。

河村 そうはいっても鵠沼を始め湘南には都内など県外からも多くのサーファーが訪れますから、感染拡大が進んでいた都心の人が湘南に来ることは地元の人たちにしてみると脅威になってしまいました。

佐賀 行政としてもそういった声もあって、駐車場の閉鎖、そして『海岸への立ち入りはお控えください』の張り紙をすることになりました。

善家 サーフィンがオリンピック種目になって注目され始めていたのに、悪いイメージになってしまって。僕らはプロでもあるので日々の練習も必要でしたが、これ以上イメージが悪化するのも嫌だったので、海に入ることは控えました。

SFJ それぞれの思いがあると思いますが、ようやく神奈川県でも緊急事態宣言が解除されました。新しい生活様式の中でのサーフィンをどうしていくか大事ですよね。

佐賀 鵠沼は昔からはビジターを受け入れるローカリズムがあって、解除後はまた多くのビジターが来ると思います。海岸での感染リスクは低いと言われていますけど、サーフィン後に砂浜でたまったりしていたら、それはまた地元の人たち脅威と見られてしまいます。再び感染拡大が起こらないとも限らないので。

河村 海だから大丈夫ではなく、周りの人を想う気持ち、周りの人を不安にさせない、思いやりを持った行動が必要だよね。

佐賀 今回の様に、漠然と『立ち入りをお控えください』ではなく、リスクを回避するために何が良くて、何がダメな行動なのかを示す必要はありますよね。

善家 今回の自粛ムードで子供たちを始め、若い子たちがサーフィンできなくなってしまって、それが本当に可愛そうでした。

河村 彼らには伸び伸びとサーフィンできる環境を作ってあげる必要はあるよね。

善家 サーフィンを楽しんだらサクッと帰る。だから海は開放するけど、たまってしまうから砂浜はクローズするとかでも良いんじゃないですかね。Door to Oceanって感じで。

河村 波が小さいと特にポイントにたまってしまい密になるからね。気をつけるようにサーフィン中に声がけとかも必要だよね。最近はビジターの人と話すことってないけど、これからそういうコミニケーションが必要になるよね。

全員 昔は先輩からの指導的ローカリズム(苦笑)ルールってあったよね。

善家 今の時代は、地元育ちも移住者もお互いがサーフィンをリスペクトして一つになって、自分たちの暮らす街を思うルールが大事ですよ!

佐賀 行政中心じゃなくて、自分たちの目線で現場にあったガイドラインを作っていきたいですよね。コロナ時代の鵠沼ルール!

全員 最新版、鵠沼『ローカリズム2.0』ってイイんじゃない!

SFJ 共存、優しさ、思いやり、ビジターにも優しく接する、地域社会の背景も考えるルール。鵠沼発の〝ローカリズム2.0〟寛容性のある新しい時代の幕開けに期待しましょう!

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河村正美(カワムラマサミ)
1959年1月22日 鵠沼生まれ
日本を代表するトッププロサーファー。マミの愛称で多くのサーファーからリスペクトされるカリスマ的存在。サーフボードシェーパーとして自身のブランド「AQUARIUS」を展開。ミュージシャンとしての音楽活動も行う。

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善家尚史(ゼンケナオフミ)
1986年1月20日 鵠沼生まれ
小学生まで子役として活動し、中学生からサーフィンにのめり込む。20歳でプロに転向、30歳でプロ初優勝し、続く2連続で優勝を成し遂げる。若手プロサーファーたちから慕われる兄貴分的存在。父は鵠沼のレジェンド、善家誠。

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佐賀和樹(サガワキ)
1972年9月1日 鵠沼生まれ
日本サーフィン史の草分を父に持ち、幼少期から湘南のサーフカルチャーの中心で育つ。地元の海岸開発反対運動を展開し政治家を志す。 1999年から藤沢市議会議員を務め、現在6期目。海岸や周辺環境における課題解決に取り組む。

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写真撮影 市川紀元