続・COVID-19 カリフォルニアの状況

4月26日、4月前半より南カリフォルニア、ハンティントン、ニューポート(オレンジ郡)など一部の地域を除いて閉鎖中であったビーチが4月27日より多くのビーチが限定的ではあるが、開放するとのメールが行政より住民に届く。そのニュースは前日より特にサーファーにとっては大きなニュースとなっており、やっと地元でサーフィンできると歓喜する人々の意見と比例して、これはあくまでも部分的開放であり、この機会を無駄にして元に戻す事なく急がずにビーチへ戻ろうと促す意見もある。

Surfer誌のオンラインサイトなどはこれはあくまでもテスト期間だから、混乱を招いたら元に戻るぞ!と喚起している。今回の限定ビーチ開放の通達があった以前に限定的にサーフィン可能であった、北のサンタクルーズ、ベンチュラ郡や前述したオレンジ郡のビーチであったが、それらの海岸はサーファーやビーチに遊びに来る人々により普段のコンディションよりも混雑しており、この一極集中している現状には近隣の人々の多くは不満を抱いていた。

日本の状況と近いとは言えるが、自発性を期待できないアメリカの国民性では規制により一気に管理するしか方法が無いのも事実である。とは言えサーフィンという行為は必ずしも感染には直接繋がらないと言う見解もあり、州、郡、市の各行政と住民の誰もが納得する指針を決定するのが難しく、手探りで状況に対応しながらも各自治体が答えを模索している。

そんな中でサンディエゴ郡は決定したビーチの一部開放を住民にアナウンスした。その数日前にもサーファーや街のビジネスを営む人々より海沿いで抗議デモが何件もあり、それこそ全くソーシャルディスタンスが取れていない状況下であったが、ロックダウンも一ヶ月続くと、こと個人の主張を守られるアメリカ は大きく意見が分かれ始めているのがよく分かる。実の処を言えば、自治体の決断には共和党と民主党の二大政党の代表がどちらであるかも多分に影響していると言う。オレンジ郡は全体として経済活動を元に戻そうとする共和党支持者が多いとの事。

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4月27日、いよいよ場所によっては一ヶ月以上ぶりに一部ビーチが開放された。普段アクセスできる駐車場、階段などは全て封鎖されており、遠回りで徒歩であればアクセスできるサーフスポットもあったので、この日の朝は普段以上に多くのサーファーがビーチ集まり久々のサーフィンを楽しんでいた。

写真を撮る道中にすれ違ったジョエル・チューダーの父、パパジョーに他の場所の状況を尋ねると、アクセスできる場所は全て混みすぎでパーキングも無くサーフィンする気分にもなれないと、がっかりしていた。しかしながら海で滞在して良い訳では無く、あくまでもアクセスが可能なだけで、もし海での滞在中、座ったりしているとライフガードより警告を受け歩き続けるように促される。(サンディエゴ郡に限りオレンジ郡は滞在可能であった)

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ここサンディエゴでも解放後のビーチの混雑は、すぐに問題となり、NBCなどの地元メディアでも大きくこの状況をリポートした。このままではまたすぐに閉鎖されると危惧する人々もおり、そしてCNNなどのナショナルメディアでもこの事態を大きく報道した。特にハンティントン、ニューポートビーチは一年で最も人が集まる、7月4日の独立記念日の様に多くの人々が押し寄せ、これではまた行政がビーチをクローズしてしまうと嘆き、せっかく開放された他のビーチがまた閉鎖されてしまうと危惧する人も多くいた。マリブなどのロスアンゼルス郡のビーチは継続して閉鎖されており、そこから人々が大挙しているらしい。

STAY HOMEの意見と同じくらいサーフィンするのは良いと思うしすべきたど言う意見も見受けられ、ビーチに滞在する人が多過ぎる事が問題でサーフィンとは別に考えようとの意見も多いが結果論としてビーチ全体として問題解決策を出すので、この状態は異常であるとの報道もあった結果、どの自治体も再度、状況を見直すこととなってしまった。サーフィンは犯罪では無い、サーフィンは重要だ、と掲げた海沿いのサーフショップの看板メッセージがサーファーとしては痛いほど突き刺さる。

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しかし、この広告はお店が閉店中で洋服が売れないので、代わりにマスクをオンラインで販売しているサーフショップのメッセージ含めた苦肉のアイディアであった。

4月30日、カルフォルニア州知事ギャビン・ニューサムがここ数日のビーチでの状況を憂いて全てのビーチをクローズするとアナウンスした。前月でも閉鎖しなかったオレンジ郡のビーチもついに閉鎖を決定する。逆にサンディエゴ郡は限定的に開放するのを継続するとアナウンスされるが、これは前月、今週までオープンしていたオレンジ郡の人々が南に所在するサンディエゴ郡に流れてくる事に繋がる、今までと逆の状態になるだけであると心配する人々もいるが、サンディエゴ郡はビーチでの滞在は禁じており、ビーチ閉鎖とサーフィン自体を禁止することの違いを理解して、現時点に於いてはパーキングなどは無いがサーフィンすること自体は許可している。

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COVID-19に於けるサーフィン界の問題は、各国、各サーフコミニティーが未曾有の事態に毎日奔走しながらベストな答えを模索している。ハワイやオーストラリアの様にサーフィンは可能だが、ビーチでの集まりや滞在は禁止すると言った方法、日本の様に自主性と民族性に沿った自粛、カリフォルニア州の様に統一する意見は持てないが、自治体の執行力と権限の範囲で閉鎖したり開放を繰り返す。4月30日時点に於いてどれが正解かは無い、誰かが言う様にニューノーマル時代が訪れ歴史が答えを証明するであろう。

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しかしながら今一つだけ言えるとしたら、サーフィンは素晴らしく悪いものではない。それは全てのサーファーが体で感じて分かっている事実である。そして多様する考えの中で皆が行動は違えど同じマインドを持って動いており、もしかして一時的な意見の相違があったとしても皆が全て海を愛して、サーフィンに情熱を捧げている。きっとそれほど遠くない未来に新しいサーフィンの世界が訪れると期待している。性善説かもしれないが人間はそれほど愚かでは無いはずだ。この強烈なワイプアウトはサーファーを必ずUpdateしてくれるであろう。

追記 : この騒動の中オンラインでしか話せなかったハービー・フレッチャーより連絡があり、久しぶりに会う事となった。前代未聞のこの事態でも相変わらずの御大は、いつもと変わらずエネルギッシュでサーフィンはしていない代わりに、家の前で拾ったビーチへの漂流物で新たなアート作品を製作中である。サーファーがサーファーであって欲しいと願いつつ、ビーチクリーンから始まった新作アート作品はユニークでクリエィティブであり、このメッセージを今だからこそ伝えたいとの動画メッセージを簡単に作成してくれた。(画像をクリック!)

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あえてメッセージにはCOVID-19問題に触れてはいないが、それもまたハービースタイルであろう。そして印象に残った言葉として、多くの人々が今回本当に大切なものや存在に気付いた人も多いはずだと。家族や近い友人、何気ない海の生活など普段の生活で見失ってしまったことも気付いた人が多いのでは?とハービーの奥さんでもありクリスチャン、ネイサンの母、そしてグレイソンの祖母でもあるディビさんも本当に大切なことや人の重要性を語ってくれた。

政治的な意見やそれぞれの思惑や思想などウィルスと同様に様々な意見が溢れ出すこの問題ではあるが、少しだけ皆に色々考える時間をもらえたのではと?その経験をいかに未来に繋げる事ができるかが大切だと言う言葉胸にしっかりと刻まれて渋滞の無いハイウェイ5番を南へと帰路についた。Thrill is back!

SFJ ディレクター 横井 洋平