INTERVIEW-Vol.19 大野修聖

国内はもちろん海外でも活躍してきた“MAR”(マー)こと大野修聖さん。今や多くの日本人サーファーが世界のコンペシーンをにぎわすようになったが、その口火を切ったのがMARだ。日本のサーフシーンをけん引してきたサーフヒーローに、現在の活動、今後の展望、そして海の環境について話を聞いた。

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大野修聖 / 写真  横山泰介

1981年2月生まれ。静岡県下田市出身。両親ともにサーファーという環境の下、8歳からサーフィンを双子の兄、ノリこと仙雅とともに始め、16歳でプロに転向。2004年、2005年と2年連続でJPSAグランドチャンピオンに輝く。2006年からはオーストラリアなど海外に拠点を移し、WCTツアーにクォリファイすべく活動。2009年ポルトガルでのWQS6スターで準優勝を果たすなど、自ら持つ日本人記録を次々塗り替えた。そして2013年、日本にカムバックすると6戦中5戦を優勝、残る1戦も準優勝という前人未到の記録で3度目の頂点を極めたまた、波乗りジャパンのシンボルライダーとして東京オリンピックの招致活動に貢献。ISAが新たに設立したアスリート委員会のメンバーにも選ばれている。

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昨年9月、伊豆下田・多々戸ビーチで開催された「FunTheMental」。多くのサーファーでにぎわった

SURFRIDER FOUNDATION JAPAN (以下SFJ ) :現在、どのような活動をされていますか。

国内のJPSAとWQSの大会をフォローしています。また、サーフィンの日本代表「波乗りジャパン」のキャプテンとして活動しています。個人的な活動としては、毎年地元の伊豆下田・多々戸ビーチで「FunTheMental」というビーチイベントを開催しています。

SFJ :いろいろと精力的に活動されていますね。「FunTheMental」は昨年で3回目となりましたが、どんなイベントですか。

シンプルに波に乗る楽しさをみんなで共有するイベントです。メインは「FunTheMental SURF BOOGIE」というサーフコンテスト。サーフィンのためのトレーニングやメディテーションやヨガ、ワークショップなどのビーチイベントも開催しました。友人のMicro from Def Techや仲間のミュージシャンによるライブも盛り上がりましたね。

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長年コンペティションの世界で戦い続けてきた大野さん。サーフィンの歴史やカルチャーを次世代に伝えたい、と「FunTheMental」をスタートした

SFJ :「FunTheMental SURF BOOGIE」はレギュレーションが特別で、とてもおもしろいコンテストですよね。参加者の笑顔が印象的でした。

とても自由なんですよ。こちらで用意したサーフボード、シングルフィン、ツインフィン、クアッド、スラスター、ワイメアガン、ヴィンテージボードから、好きなボードを選んで乗ってもらう。もちろん自分で持ってきたボードでもいいですし、ボディサーフィンでもいいんです。どんな乗り方をしてもいいんですが、その人がいかに海とシンクロしているかがクライテリア(ジャッジの基準)になります。性別年齢問わず、誰でもエントリーが可能なんです。

SFJ :本当に自由でファンなコンテストですね。「FunTheMental」を始めようと思ったきっかけは。

自分は3本フィンで育って、そのままコンペティションに入ってずっとサーフィンをやってきました。それでシングルフィンとかツインフィンとか、サーフィンの歴史というものを知りたい、というのがまずありましたね。趣味で始まったサーフィンとか、何も枠に捕らわれないサーフィンというものをもっと追求したくて。それを皆とシェアして、サーフィンカルチャーの歴史を次世代に伝えられれば……。

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「FunTheMental」のメインイベント「FunTheMental SURF BOOGIE」。ロング、ツイン、ヴィンテージなど用意されたボードを自由にセレクト。クライテリアはいかに海とシンクロできるか

SFJ :今年も開催予定とのことで、とても楽しみです。今後、どのような展開を考えていますか。

横に広くよりは、下に深く掘り下げたいですね。何千人に来てもらいたいというよりも、本当にこのイベントが好きで来てもらいたい。プロサーファーはもちろんですが、ビーチイベントにはミュージシャンや大工など、何かを極めて人生を生きている人達がたくさんいます。子ども達がそのような人達と出会い一緒の空気を吸って、「こんな大人になりたい」とか思ってくれたらいいと思っています。もちろん、サーフィンはイベントのコアにありますが。

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「FunTheMental」には国内外からゲストサーファーが訪れた。オーストラリアのレジェンド、トム・キャロル(中央)、過去3度グランドチャンピオンに輝いた間屋口香さん(右)。地元の写真家、土屋高弘さんとともに

SFJ :東京オリンピックについてお聞きしたいのですが、来年に延期になってしまいましたがサーフィンが正式種目になりました。長年、コンペティションの世界で活躍してきた一人として、率直な感想は。

プロスポーツとして認められるという意味では素晴らしいことですよね。すごいチャンスだと思います。サーフィンをやっていない世代が「格好いいな、やってみたいな」という機会が増えれば。「波乗りジャパン」のキャプテンとして、選手の間の橋渡しをしてチーム全体をまとめたいですね。

SFJ :世界中の海を見てきたと思いますが、環境のために実践していることはありますか。

自分の出来る範囲では、海から上がって来てゴミを拾うとか、コンビニでプラスチックの袋をもらわない、自分の持っているバッグを持って行くとかのレベルです。ですが、この2年くらいサーフライダーファウンデーションのディレクターでもある石川拳大君と新しいプロジェクトを考えています。

SFJ :どんなプロジェクトですか。

オーストラリアへ行くと、ウォーターマシンが街やビーチに設置してあるんです。みんなが自分のボトルを持って行って、そこで水を購入できる。それだと、ペットボトルは不要になる。日本でも都内に設置し始めているんですが、まだ本当に数えるほどです。自分達は海の人間だから、「海沿いでそういう動きを広めたい」と、いろんな人と話をしています。ベストなカタチを見つけて、実現するために動いているところです。

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いつも前を向いて行動する大野さん。サーフィンを追求していくことで、新しい何かが見えてくると言う

SFJ :それはいいプロジェクトですね。サーフライダーファウンデーションでも、ぜひ協力させて下さい。最後に大野さんのこれからの生き方や夢をお聞かせ願えますか。

一生現役でサーフィンをやっていきたいです。まあ、サーフィン以外は考えられないですね。人生を賭けて追求するというか、突き詰めるというか。終わりがないのはわかっています。ただ、サーフィンを本気でやることで、そこから見えてくるものというか、つながっていくものがすごくあると思います。何を言おうと、サーフィンが大好きなんです。

SFJ :どうもありがとうございました。

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